2022年度

「ハンナのかばん」講演会と事後学習

この記事は1年以上前の記事のため、内容が古い可能性があります。
投稿日2023/3/25

中2の3学期のLHRでは、石岡史子さんをお招きして、『ハンナのかばん』講演会を行いました。石岡さんのアプローチは、時事的なテーマを盛り込んだり、自分の生活と関連づけて考えたりするような工夫がされています。今回は、生徒の参加を促す形で、「問いを作る」ことから始まりました。

「戦争の責任は、偉い人たちや政治家、資本家にだけあるのではありません。そうなんです、責任は名もない一般の人たちにもあるのです。」という文章から、心に浮かぶ問いを作ります。(実は、この文章は『アンネの日記』の一節で、生徒は現代文の課題図書として読んでおり、それを想起した生徒もいました。)「責任を取るとは?」「一般の人たちとは誰のことか?」など、本質に迫る問いが挙げられていきました。その後も数枚の写真から読み取ったものから問いを作りつつ、ホロコーストの歴史、ハンナをめぐる物語、そして現代にも起こる差別や偏見に触れながら、生徒に問いかける形で、講演が進んでいきました。

(生徒の感想より)

「歴史は疑問を通して学んでいくものであることを知りました。戦争などで起こっていたことは現代までつながってしまっていて、私たちのだれもが知らぬ間に戦争に加担しているかもしれないと思うと、戦争の歴史を学ぶことに対する感じ方が変化した気がします。」

「『自分は決して差別をしない人だ』という自覚を持って行動するのではなく、『自分は無意識に人を差別している』ということを意識して、自分の行動を顧みながら生きていくことが必要だなと思います。」

「講演が質問形式だったので、みんなの意見、私とは違う見方をしている子など、たくさんの意見を聴くことが出来ました。私もいつかアウシュビッツの収容所など、当時の様子が知れるような場所に行ってみたいです。」

この講演会を受けて、翌週にはグループごとに「Peace Museum」の作成に取り組みました。「私たちの生きたい社会」というテーマに基づき、ホロコーストに関する16枚の写真の中から話し合いで6枚を選び、自由に写真を配置して、タイトルや言葉、イラストや吹き出しのセリフなどを書いて、模造紙にまとめていきます。限られた時間の中で、方向性を決めていくのは、なかなか至難の業です。

最後はグループごとに発表し、パネルに掲示しました。「誰もが差別されない」「平和を築くために」などのフレーズが並び、同じ写真を選んでも、組み合わせによって、異なるストーリーが生まれるのが興味深いところです。

石岡さんからの推薦図書に対して、購入希望者も多くあり、サイン入りの本を手にした生徒達は嬉しそうでした。『ハンナのかばん』の本には、「悲しみを希望に変えて」というメッセージが添えられています。国連は、アウシュビッツ収容所が開放された日にちなんで、1月27日を「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」に定めています。今回の学びは、生徒達にとって「負の歴史」に学び、関心を持ち続けること、寛容な社会を作るために自分ができることを模索する大切さを知る貴重な機会となりました。

page top