2022年度

聖母月行事「人権の時代に向かって」

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投稿日2022/5/17

5月は聖母マリアを讃える月にあたり、「いのちの大切さを考える」機会として、ピーター・フランクルさんをお招きして「人権の時代に向かって」という演題で、講演会を行いました。コロナ禍の影響により、全校生徒が一堂に会して講演会に参加するのは、3年ぶりとなります。

生徒たちの歓迎の拍手の中、フランクルさんは大きなトランクを引きながら、にこやかに大道芸人の衣装で登場されました。ハンガリーで生まれ育った少年時代のお話から始まり、ご自身の豊富な体験をユーモアたっぷりに語ってくださいました。時々、生徒たちに質問を投げかけ、回答した生徒にはお人形が渡されるという微笑ましい場面もありました。

7歳の時に、仲良く遊んでいた近所の少女からののしられ、初めて自分がユダヤ人だと知ったこと、その話を母親にしたところ、「差別はなくならない」と嘆き悲しんだというエピソードは、生徒たちに強烈に印象づけられました。戦時中にユダヤ人への排斥により、強制収容所で辛い経験をした両親の話、戦後になって医師として働く両親は、貧しい患者から治療費を取らず、家族ぐるみで交流を持った話などがフランクルさんの生き方に大きな影響を及ぼしたことが伝わってきました。「人間の財産は頭と心」という、父親からの教えを生徒たちにも紹介されました。「頭」とはすなわち生きていくために知識を身につけること、学ぶことであり、知識は人と分かち合えば増える財産であり、「心」とは自分を支える友達のことです。金銭や物質的な消費でなく、「知的消費」が大切だと熱っぽく語られました。

自分の中に潜む差別意識や加害者性についても話してくださいました。数学者として各国を訪問する中で、インドでは全く言葉も生活習慣も違う人々に出会い、ショックを受けますが、「郷に入っては郷に従え」の精神で、現地の人々と同じように過ごすうちに、家族のような温かいつながりが生まれた話も、生徒たちに響いたようです。「自分も今までの生活で、他人とのほんのささいな違いも認められなかったりして、少しけんかになってしまうこともありました。」(生徒のふりかえりより)

外国へ行くときは、その国の言語を学ぶ経験を積んで、12カ国の言語を習得された中でも、日本語が一番難しいと仰っていました。日本語を話すとほめられ、各人の努力が評価され、協調性や平和を大切にする日本がお気に入りになったそうです。

数学クイズを紹介されたり、たくさんの生徒たちからの質問には、ジャグリングを披露しながら答えてくださったりして、会場全体が一体感と温かな雰囲気に包まれました。最後にメッセージとして生徒たちに送ってくださったのは、「Keep your heart open」という言葉でした。様々な差別や偏見によって、人々が分断される現代で、私たちがどのように人権や多様性を守っていくか、真剣に考える貴重な機会となりました。

(生徒のふりかえりより)
「差別は親から子へどんどん伝わっていくという話を聞き、思い当たることがありました。『この国の人々はあまりよくないな』という言葉をテレビや親族から聞き、小さい頃からそのイメージがついたことです。私は行ったこともないのに心の中で差別していたことに気づきました。」

「『Keep your heart open』という言葉は、これからグローバル化していく世界で、とても重要な言葉だと思った。私は相手を理解する前に、自分の意見を押しつけてしまうことがある。押しつけるだけで相手を理解しようとしないのは、戦争につながってしまう怖い行動だと感じた。」

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