初夏のまぶしい陽射しに照らされて、若葉が目にしみる季節となりました。カトリック教会では、5月をキリストの御母であるマリアへの崇敬を深める聖母月としています。
晃華学園の校内に置かれたいくつかのマリア像は、いずれも慈愛に満ちた穏やかなほほえみを湛えて、いつも私たちを温かく見守って下さっています。
新型コロナウイルスへの対応に関して、世界のリーダーたちの采配を見ると、ドイツのメルケル首相、ニュージーランドのアーダーン首相など、女性政治家たちの活躍が賞賛されています。3月18日のメルケル首相の演説(→「ドイツ大使館」HP参照。)は、私たちの身近な生活が脅かされている現実を憂い、いのちに対する畏敬の念、感染リスクを負いながらも使命を全うする医療従事者をはじめ、人々の生活を支えるためにスーパーで働く人々への敬意を示しました。生活者の視線で繰り返し語りかける姿勢は、女性らしい思いやりと慈しみにあふれており、危機的な状況だからこそ、さらに胸を打ちます。
マスクの高騰や買い占め、イベントの中止、感染者への偏見や風評被害など、ただならぬ緊迫感の中で、私自身は2011年の東日本大震災の時と同じような空気を感じていました。そして、福島県の被災地で働く、あるシスターのことを思い出しました。2014年に講演のために来校されたシスター畠中千秋(当時の「CTVC」(カトリック東京ボランティアセンター)、現在の「カリタス南相馬」)は、高校生たちに被災地の現状や復興支援について、たくさんの写真を見せながら語って下さいました。風に揺れる美しいコスモスの写真を見ながら、「いつか南相馬へ行こう」という決意を抱いたまま、実行に移せず6年もの歳月が流れました。シスターや被災地で暮らす人々はお元気だろうか、と案じつつメールを送ったところ、幸いにもご縁がつながり、震災、津波、原発事故の影響は9年経った今でも人々の生活に重くのしかかっていること、昨年の台風19号の豪雨被害に見舞われた地域でもあることなどを知らせてくださいました。南相馬へのボランティア派遣についても、いまはコロナウイルス感染を防止するために避けなければならない状況です。しかしながら、シスターが送って下さったパンフレット(→「カリタス南相馬」HP参照。)では、地域住民の方々を支える活動がいくつも紹介され、集合写真では働く人々の明るい笑顔がとても印象的です。
人と人とが実際に触れ合うことは難しくても、互いにつながりを持とうとする心の交流までが途絶えたわけではありません。このような逆境だからこそ、より強くその結びつきを感じられます。人の痛みや苦しみに寄り添い、支え合う社会を築いていくことが求められていると思います。福島で度重なる苦難の中でたくましく生きる方々のために祈りつつ、シスター畠中のあたたかい笑顔に再会できる日を切望しています。
ドイツ大使館ホームページはこちら
カリタス南相馬ホームページはこちら