2023年度

2023年度 聖母月行事

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投稿日2023/6/20

 

毎年5月には、「聖母月行事」で講演会を行っています。今年度は本校の卒業生でもある曽田夏記さん(※1 自立生活センターSTEPえどがわ職員)をお招きしました。アメリカで、障害者運動のリーダーとして、当事者を巻き込みながら様々な差別と戦い、クリントン、オバマ政権下で要職を務めたジュディス・ヒューマン氏の自伝(※2)を、曽田さんが日本語に翻訳されたことがきっかけとなり、昨年度の学校説明会に続き、今回の講演会でお話をお願いしました。母校での講演を快諾し、ご自身の半生を母校の後輩たちへ熱く語ってくださいました。

講演のタイトルは「自他の可能性を信じきるー中途障害者となった私の国際協力-」です。今回の講演会は、車椅子での登壇となり、対面で生徒たちの表情を見ながらの講演会にするための試行錯誤が、直前まで行われました。舞台上での講演が難しかったため、フロアからお話をすることを了解いただき、高さや角度を調節したり、曽田さんの姿と画面のスライドが見えるように機材を調整したりしながら、ようやく納得のいくいスタイルに落ち着きました。車椅子で生活している人は、様々な場面で工夫をしていることに気づき、このような作業も大きな学びとなりました。

曽田さんの講演はまず、晃華学園在学中に、ソフトテニス部やバンド活動で、友人たちと楽しく過ごした体験から始まりました。生徒たちも自身の学園生活と重ねて、親近感を持って話を聞き始めました。その後は、曽田さんの壮絶なライフヒストリーが展開されていきます。大学時代に、倒れた母の介護、モンゴルの孤児院で、ある少女との出会いを通して、国際協力への憧れを持ち始めたものの、突然襲った足の痛みから、二足歩行が困難になり、数々の挫折を味わった体験を、淡々と語られ、会場全体がしんと静まり返り、真剣に曽田さんの言葉に耳を傾ける様子が感じられました。障がい者として、様々な可能性が閉ざされていく中でも、ずっと自分を支えてくれた家族や友人の言葉に励まされ、アフリカのルワンダで障がい当事者たちが社会を変えようとする運動に共鳴し、このような人々と働きたいという新たな目標が生まれます。そのためには、自分だけで物事を進めようとするのではなく、仲間の力や可能性を信じ切って、任せたり、支え合ったりすることが大切だと気づき、ご自身が大切にしている西アフリカのことわざを紹介してくださりました。「早く行きたければ、ひとりで行きなさい。遠くへ行きたければ、みんなと行きなさい。」たとえ自分の足が治って歩けるようになるとしても、それを望まない、障がいを通して、素晴らしい仲間と出会えたこと、得がたい体験をできたことを大切にしている、という曽田さんの言葉も、深く生徒たちの心に刻まれました。

質疑応答の時間も、生徒たちからの質問に、まるでカウンセリングのように親身になって応える曽田さんの姿が印象的でした。この講演を通して、晃華学園に脈々と息づく「ノーブレス・オブリージュ」、人のために、人と共に生きる精神が貫かれていることに気づかされました。母校での講演会で、身を賭して語って下さった曽田さんに心から感謝すると共に、全身全霊で曽田さんの言葉を受け止めた生徒たちも、生きる勇気を与えられたことと思います。

(生徒の振り返りより)

「曽田さんの講演を聴いて、自分の様々な経験を力に変えて活動していることに感銘を受けた。『FIX THE SYSTEM,NOT ME』(私じゃない、システムを直せ)という考え方にはっとした。障害をなおすのではなく、障害を持った人もそうでない人も暮らしやすい町にする方が、良い解決方法だと気づいた。」

「障害をもつ若者の『最初の一歩』を応援する途上国体験プロジェクトで、『その人の力を信じて待てるかどうかが大事である』という言葉に共感しました。私はまだ、『自他』の人生を変える出会いをしたことはありませんが、これから先で出会いがあるとしたら、相手から『信頼できる』、『任せられる』人でありたいと思います。」

 

※1 自立生活センターSTEPえどがわ – 自立生活センターSTEPえどがわ:障害者の自立生活を応援するページ (step-edogawa.com)

※2 ジュディス・ヒューマン、クリステン・ジョイナー著、曽田夏記訳『わたしが人間であるために 障害者の公民権運動を闘った「私たち」の物語』(2021年、現代書館)

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