先週の中高合同放送朝礼で、校長先生から以下のお話がありました。
「皆さんおはようございます。今日は、役割と使命について二冊の絵本と創世記の個所からお話しようと思います。一冊目は、いわむらかずお氏が描かれたネズミの家族の物語『14匹』シリーズです。知っている人もいるでしょう。14匹とは、おとうさん、おかあさん、おじいさん、おばあさんの4匹と、いっくんからとっくんまでの兄弟10匹で14匹、ということです。この絵本は、いわむら氏の、自然の中に暮らす家族を題材に納得いくまで描き込んで作りたいという思いの通り、どの場面も丁寧に描かれ、各ページの隅々までゆっくり見たいという気持ちにさせてくれます。この絵本の良さはそれだけではなく、どの子ネズミもその子なりに活躍できるよう役割が与えられていることです。『14匹のさむいふゆ』では、夜、柔らかなオレンジ色の明かりが満ちた温かい部屋でおじいさんを中心に3匹の子ネズミが竹を切ったり、削ったりしてそりを作っています。明日みんなで遊ぶためです。その傍らのテーブルではとんがりぼうしゲーム作りがお父さんを中心に4匹の子ネズミたちで行われています。そしてお台所では、おばあさんとお母さんを中心に3匹の子ネズミが粉を練ったり、餡を包んだりしておまんじゅうを作っています。みんなでお饅頭を食べてゲームをするのです。
二冊目は、『ヤマアラシ坊やのクリスマス』という絵本です。一読すると、いじめを扱った本かな、と思いますが、最後の場面で、みんなが気づかなかった大切な役割があったでしょ、というお話になっています。クリスマスに発表する劇のために動物の子どもたちは、自分たちで役を決めました。ヤマアラシ坊やは格好が悪いということで何の役にもつけてもらえず、お掃除係を押し付けられました。悲しくて泣いて帰ったヤマアラシ坊やをお母さんは「あなたは私の光」と言って慰めました。それで、元気を出し、お掃除を一生懸命やります。この絵本の最後では、空に光る星がないことに気づいた観客が、星がないわ、と口々にいいます。それでヤマアラシ坊やが機転をきかせて急いでもみの木に登っていき、自分の体の棘を光らせて星の役をやります。クリスマス劇にとって、星は幼子イエスの所に博士たちを導く重要な役どころでした。
この二冊の絵本は、どの子にも役割があって、それによって人は生き生きとする存在なのだと教えてくれます。役割は、年齢や所属するグループによって変わっていきます。その人の本質となっているものではありません。反対に使命は、その人の存在理由に基づくもので、生涯変わりません。創世記2章の天地創造の物語にそのことが書かれています。天地創造の物語は創世記1章と2章に書かれていますが、人間には地を耕す使命が与えられた、と書かれているのは2章です。1章が、神の言葉で宇宙万物すべてのものが造られたのに対して、2章は不完全な創造で始まり、女性の創造によってこの世界が完成されたことを語っています。なぜ不完全かといいますと、植物のための水と、地を耕す人間という二つの要素が欠けているからです。こうして、地を耕して実りをもたらすことに欠かすことが出来ない存在として人間が創りだされていくわけです。存在の始めに労働という、持って生まれた使命ありきです。地を耕すとは、皆さん農業をやりましょう、と言うことではなく、耕すという言葉からカルチャーという言葉が出てきているように、自分の中に自分らしい文化を作っていきましょう、あるいは、自分の中にある本来の使命に気付いていきましょう、ということです。そして、そのためになくてはならないのが、他の人の存在です。アダムのためにエバが造られ、エバもアダムとの関わりで自分の中に自分らしさを築いて行きます。
役割と使命は変わるもの、変わらないものという違いはありますが、両方とも自分のためそして他者への奉仕のために私たちはいただいています。自分の使命を見出した人もまだの人もいるでしょう。見出した人はその使命を通して、まだの人は役割を通して互いに奉仕しあっていきましょう。家庭で、そして学校で、クラスで、何らかの役割を持っているのはそのためです。これで、話を終わります。」