生命が光り輝く5月は、カトリックの暦で聖母マリアを讃える「聖母月」と呼ばれます。5月7日に「聖母月行事」の講演会で、J-PARCに勤務するお二人の研究者をお招きして、全校生徒がお話をうかがいました。
柴崎千枝さんは、晃華学園の卒業生でもあり、理科(化学)の教員としての経験もある方で、生徒たちにとっては親しみを感じる存在です。「〝生命〟と〝光〟に心を奪われて~あるポンコツ女性研究者の歩んできた道~」と題して、ご自身の女性研究者としてのキャリアをユーモアたっぷりに伝えてくださいました。大学に入学してから、優秀な学友たちに圧倒されて劣等感を抱きつつも、ゼミでは「光を見る研究室」で研究の面白さに目覚めたこと、教職に就きながらも研究を深めて、二足のわらじを履く人生を選んだことなど、ざっくばらんに語る柴崎さん。
迷ったときは「やらない後悔よりもやる後悔」、苦手なことがあっても、それが強みになったり、克服する機会が与えられたりすること、人や物事の縁を大切にするという生き方は、学業や進路について悩みを抱える生徒たちに大いに共感を呼ぶ内容でした。
小林隆さん(J-PARCセンター長)は、「大きな宇宙のひみつと ミクロな世界のひみつと 加速器と」というタイトルで、幼い頃から宇宙や天体に興味があり、繰り返し読んだ『宇宙のひみつ』という本が、物理学(量子力学)を学ぶきっかけになり、宇宙や生命の起源はいまだに解明されていないことがたくさんあるとお話されました。
大きな宇宙とミクロの世界はつながっており、加速器を使うことで宇宙の起源であるビッグバンが起こった原因に近づくことができることなどを分かりやすく伝えてくださいました。J-PARCの施設での最先端の研究に興味を抱いた生徒がたくさんおりました。
質疑応答では、「宇宙人はいるのだろうか?」という質問にはじまり、多くの質問に対して、お二人とも丁寧に回答していただき、活発な意見交換の場となりました。
文・理を問わず、素朴な疑問を大切にし、サイエンスに興味を持ち続けてほしいとメッセージをいただきました。理系の分野でも女性の活躍が増えてきている昨今、生徒たちにとって、大いに勇気づけられる講演会となりました。
晃華学園では、行事の後に「ふりかえり」として自分の考えを言葉にします。以下で生徒のふりかえりから一部抜粋して掲載します。
・高校を卒業し、大学へ入学し、職業に就くという人生を歩もうとしている中、私がこの道を進もうとしているのは、自分の意志だけではなく、周りの人々が同じ道を歩もうとしているからなのではないかと疑問を感じたことがある。しかし、柴崎さんの話を聞き、どのような人生を歩もうとも、自分のやりたいことに忠実に努力することができれば、後から自分の人生を振り返った際に満足であると言えるのだろうと思った。
・私は研究職に興味があり、自分の知りたい内容を自らの手で研究し、解明したいと思っている。小林さんのように、自分の興味のある事柄を研究できるよう努力していきたい。
・加速器というものを初めて聞き、とても興味を持ちました。J-PARCがされている事業について調べて、宇宙という未知の内容についても知りたいと思いました。女性の場合、理系で修士や博士まで進んだ人と大学4年で就職した人では、どうしても結婚や出産のタイミングが大きく変わってしまうと思います。その差が少しでも縮まられるように、男女で研究のしやすさが変わらないようになるといいなと思います。
・一つのトピックについて深掘りできるのは、それだけ研究を愛しているからだと感じた。自分のやりたいことに全力で取り組む姿勢が、分野を問わず魅力的に感じられたし、一般的に理想とされるキャリアから外れたとしても、意外と満足のいくものになることを学べた。
・柴崎さんのお話に出てきた「人や物事との出会い、再開、やり直し=縁」という言葉に感動しました。自分の中で考えている将来のキャリアはたしかに大事だと思うけれど、人生どうなるか分からないし、自分の興味のあることや学びたいことは変わっていくと思うので、臨機応変に対応できたらいいなと思う。