2020年8月5日、1学期終業式が行われました。
校長先生から、次のようなお話がありました。
「おはようございます。いよいよ、終業式の日となりました。学校再開後、検温、マスク着用、手洗い、密を避けるなど生徒の皆さんの協力のおかげで、今日の日を迎えることができました。ありがとうございます。
さて、始業式の時、私は皆さんに、ケンタッキー・フライドチキンのカーネルサンダースさんのお話をしました。40歳から始めたガソリンスタンドとレストランが65歳の時に倒産し、彼は再起を図るために、自分のレストランで好評だったチキンのレシピを売り込み、1010軒目のレストランでようやくOKがもらえました。が、それは彼が、何百件断られてもあきらめないでレシピを売り込み続けたからです。ですから、皆さんも自分で自分に限界を付けないで頑張ってほしいというお話しでした。
今日は、予期しない出来事に遭遇した時、どのように向き合えばよいのか、ということを、『かさどろぼう』というスリランカの絵本の主人公キリ・ママおじさんを通して考えたいと思います。絵本のあらすじは次の通りです。
昔、スリランカの小さな村に、キリ・ママというおじさんがいました。ある日、初めて町に行ったおじさんは、人々が日よけのために色とりどりの傘をさしているのを見ました。その美しい傘に魅せられて自分のために1本買って帰ります。村に着くと、バス停のそばのコーヒー店に入りました。傘は塀の陰に隠しておきました。ところが、帰ろうとすると傘がありません。おじさんはがっかりしました。雨が降ったらまた傘の代わりが必要です。村の人たちは雨が降るとバナナの葉っぱやきれなどを傘替わりにしているのです。そこで再び傘を買いに町に行きました。ところが、何度買っても、帰りにコーヒー店で休んでいる間に傘がなくなってしまうのです。そこで、どうして何本も傘を盗むのか不思議に思い、泥棒を捕まえてやろうと考えました。そして、次の日又町へ行って傘を買い、その傘に、工夫をしました。たたんだ傘の中に小さな紙きれを入れたのです。そしていつものところに隠しておきました。すると案の定傘が消えました。そこで、紙をたどっていくと、森の木の枝に盗まれた傘が並んでぶら下がっていました。おじさんはうれしくなって、傘を持って帰りました。しかし、一本だけ、泥棒に残しておいてあげました。
おじさんは傘のお店を開きました。村人たちは大喜びです。それで彼は『泥棒が傘を盗んでくれたおかげで傘の店ができたのだから、お礼を言いたいくらいだよ』と思いました。
おじさんは、1本だけ残してきた傘がどうなったか知りたくて森へ行ってみました。すると、枝にぶら下がった傘は開いていて、その中に何と、こざるが座っていました。おじさんはそれを見て大笑いしました。傘泥棒はこのこざるだったのです。
終わりが何ともユーモア―に満ちています。キリ・ママさんが、傘を盗まれてとった態度は何でしょう。先ず、怒ったり、仕方がないと諦めたりせずに何度でも傘を買いに行きます。諦めずに、というところがカーネルサンダースさんと同じですね。次に傘を盗まれたおかげで、傘の店ができたのだからお礼を言いたいくらいだ、と感謝し、盗まれたことを前向きに捉えます。最後に、傘を持って帰る時、泥棒に配慮して1本残してあげています。まとめると、キリ・ママさんは、本来なら、腹を立てたり、恨んだりしてネガティブな気持ちになるところを、諦めない、感謝する、と、前向きに捉え、また、相手を配慮する心、というプラスの態度で向き合っています。そして、キリ・ママさんはもう一つ、大切なことを教えてくれます。それは、何度も傘が盗まれる、じゃあ、泥棒を捕まえよう、そのためには工夫をしよう、傘がたくさんある、じゃあ、村人のために傘屋を開こう、など、事実を基に次に進んで行くことです。つまり、感情に支配されないで、事実に目を向けることの大切さです。
その他、このお話は、マイナスと見える出来事の中に必ずプラスの面が隠れていることを教えてくれます。予期しない出来事は、新しい始まりの一歩、きっかけだ、ということを、作者のシビル・ウエッタシンハさんはキリ・ママおじさんを通して語ってくれているように思います。
明日からの夏休み、普段やらないことに挑戦して自分の枠を広げ、自分の価値を高めるために使ってみましょう。元気でお過ごしください。」