2020年度

宗教朝礼より(故人を思い祈る月)

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投稿日2020/12/5

おはようございます。数学科の〇〇です。

皆さん、少し顔を上げて、今教卓の近くに立っている先生を見てみてください。
次に、その先生が今朝どんな気持ちで起床し、どんな気持ちで学校まで移動し、どんな気持ちで今そこに立っているか、少しだけ想像してみてください。案外、難しいのではないでしょうか。
もしかしたら、皆さんの中には「へっ!担任の考えていることなんか手に取るようにわかるわ!」と考えている人がいるかもしれません。ですが、それは大抵の場合、あなたの勘違いです。皆さんは、毎日顔を合わせている担任の先生の気持ちでさえ、本当のところはよくわかっていないのです。今教育実習で来ている先生方は、それを痛感しているのではないでしょうか。

 

人の気持ちを理解するというのはとても難しいことです。
私の3歳になる息子が家で寂しそうにしていたとき、私が「どうしたの?寂しくなっちゃったの?」と声をかけると、息子に「違うの!僕うどん食べたいの!!」と怒られたことがあります。
しかもその後しきりに「パパどうしたの?寂しくなっちゃったの?」と煽られる始末。一体誰に似たんでしょうか。

親子の間でさえすれ違うのだから、皆さんが担任の気持ちがわからなくたって当然です。
ましてや私なんか、亡くなってからはじめて、母の気持ちについて考えるようになったくらいですから、皆さんに説教垂れる資格はありません。

 

私は、母が嫌いでした。
私が5歳のころ、保育園のお迎えはいつも私が最後でした。園内で私だけ、お昼寝の毛布のカバーが親から用意してもらえませんでした。
小学校からの手紙は一切読んでくれず、親のチェックが必要なものは何も出せませんでした。給食費の集金袋には「私は給食なんか注文してない」とお金を入れてくれず、担任に心配される日々。
そんな親への反発からか、母親みたいな大人になってたまるか!と思っていた中学時代。
真剣に取り組んできた部活を小馬鹿にされ続けた高校時代。受験のための資金を一切だしてくれず、参考書代・センター試験料・受験料をすべてバイトでためた高3の夏。そして、そのお金を勝手に母に使われた高3の冬。なんとか合格し、入学金・授業料・部活の遠征費などすべて自分で稼ぎながら、もはや母への関心を失くしていた大学時代。
社会人になって、さすがに母親の面倒を見るようにはなりましたが、いつまで経っても終わらない私へのかまってちゃん的発言に、もう勘弁してくれと嫌気をさしていたのも事実です。

 

昨年の5月、母はこの世を去りました。突然のことでした。葬儀あたりの記憶はほとんどありません。日中は仕事があるため、夜間になってから、親戚の日程調整、お金の計算、遺品整理、相続の問題など色々やっていて、忙しかったせいかもしれません。

四十九日からしばらく経ったある日のこと、夜の坂道を歩いているときにふと、「最近母親からのかまってちゃんメールが来ないなぁ、忙しいんだろうか」と、メールBOXを開きました。
開いて数秒後、そこでハッと、母が亡くなっていることを思い出しました。
私は、このとき初めて、無意識に目を背け続けていた、「母はこの世を去った、もう2度と会うことはできない」ということを理解し、「母は寂しかったんだろうな」と、涙を流しました。

 

それからというもの、胸が痛む日々がつづきました。
スーパーで母と同じ老眼鏡をかけた方を見かけると、最後に一緒に買い物をしたのはいつだろうかと反省しました。
私が料理をするたびに、自分一人でできるようになった気でいたけれど、そういえば全部母から教わったんだと思い出しました。
息子が駆け寄って私に抱き着いてくるたび、私もこうして毎日母に抱き着いていたな、そういえばあの頃は私も母のことが大好きだったなと、25年ぶりに思い出しました。
私の息子が、私の真似をして、「パパどうしたの?さみしくなっちゃったの?」と聞いてきたとき、なぜ、どうして3歳の息子が言えることを、社会人の私が生前の母に言えなかったのだろうと、とても後悔しました。

話をもとに戻します。
相手の気持ちを考える、ということは難しいことです。今教卓の近くに立っている先生、隣のお友達、皆さんのおうちの方、それぞれの気持ちを考えるのは、数学の連立漸化式よりよっぽど難しいことです。故人ならなおさら難しいのかもしれません。
皆さんには、相手の気持ちを考えることのできる、隣人愛あふれた晃華生になってほしいものです。

これでお話を終わります。


 

カトリックでは、11月は死者の魂のために祈る月とされています。慰霊祭・静修会についての記事も是非ご覧ください。

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