2019年度

「私は教科のここが好き!」その⑭(中学進路通信)

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投稿日2019/12/31

晃華学園では、進路指導の一環として全学年でオリジナルの進路通信を発行しています。

学習に対して前向きに取り組んでもらうため、今年度は中学生の進路通信で『私は教科のここが好き!』というシリーズを企画しました。
これは、教員が自らの担当教科の好きなところを紹介し、学ぶことそのものの楽しさを実体験を交えて紹介することで、楽しんで学習に向かう姿勢の大切さを伝えていこうというコーナーです。

今回は、中学1年生の数学の教諭から寄稿です。


 

こんにちは。数学を担当している○○です。

「数学は好きですか?」と問われると、間髪入れずに「大好きです!!」と言えるのですが、「では、数学のどこが好きですか?」と問われると、なかなか言葉にするのは難しいものがあります。というのも、私にとって数学は趣味であり仕事でもあり、私のこれまでの人生に大きく関わりすぎているため、どうも具体的には書けないからです。そのかわりといってはなんですが、数学にまつわるお話をひとつさせてください。

今皆さんは連立方程式を一生懸命学習していますね。連立方程式の前には1次方程式を学習し、さらにその前には文字式を学習しました。このように、1つのものを学習するには、そこに至るまでにたくさんの過程があるのです。

連立方程式から文字式の計算までさかのぼりましたが、もっともっとさかのぼるとどうなるでしょうか。文字式を学習するためには、具体的な数の四則計算ができなくてはなりません。そして計算ができるようになるためには、まず数そのもの(整数・分数・小数etc…)を学ばなければなりません。つまり連立方程式を学ぶには、つきつめていくと数そのものを勉強する必要があります。

さて、「完璧に理解する」ということについて考えてみましょう。連立方程式を「完璧に理解する」ためには、当然その前の1次方程式を「完璧に理解する」必要があります。そしてそのためには文字式を「完璧に理解する」必要が…と考えていくと、最終的には数そのものを「完璧に理解する」必要があります。数そのものを完璧に理解するとは、

・「1」と「1つ」の違いは何か
・0より小さい個数なんて存在しないのに、なんのために考えるのか
・五感で認識できるものから数の概念は形成されているのに、数の概念そのものは五感では認識できないのはなぜか
・この世の始まりと数の概念はどちらが先に存在したのか

などといった問いに論理的に答えられる、ということになります。今皆さんが勉強している内容が、こんな難しすぎる哲学的な問いの上に成り立っていると思うと、なんだか不思議で面白く感じられませんか。

さらに、これまでの歴史の中で『私は数そのものを完璧に理解したぞ!!』と主張する人は複数いましたが、それぞれ主張の内容が異なる、ということが起きています。ある人は
「数そのものは、ものの個数から生まれた概念であり、個数がない数は考えるべきではない」と主張し、別のある人は
「量やその比較によって数そのものは誕生した。自然界に存在しない量は数ではない。」
と主張し、またある人は
「数は位置の相対関係であり、五感で認識できるかどうかは関係がない」
と主張します。数学なのに、同じ問いに複数の答えが出てくるのが、とっても不思議です。
しかもこれらは、3つのうちどれかが間違っているというわけではありません。実は、それぞれ考えのもとに、それぞれの数学の世界を広げることができるのです。つまり、数学の世界は1つではないのです。皆さんが勉強している数学は、たくさんある数学のうちの1つに過ぎないのです。びっくりしませんか。

数学については止まらなくなってしまうのでこのあたりにしておきますが、ここで一つ皆さんに考えてもらいたいことがあります。皆さんは、自分自身のことを「完璧に理解する」ことができているでしょうか。
皆さんが自分自身のことを「完璧に理解する」ためには、今の自分自身に至った過程をさかのぼっていき、より根本的な部分を「完璧に理解する」必要があります。晃華に元気に通えているのはなぜなのか。命の危険なく安心して住める家や町があるのはなぜなのか。それらを自分なりにきちんと理解して初めて、自分自身のことを理解できるようになっていけるのではないでしょうか。そしていつか(遠い先の話かもしれませんが)自分なりに『私は自分自身のことを完全に理解したぞ!』と何かしらの主張ができ、それを活かして他人を幸せにしていけると良いですね。

たかだか1つの教科に過ぎないのに、こんな色々なことを考えられるなんて、やっぱり数学は素晴らしいな、と感じます。ぜひ数学を通して思考力を身につけ、色々なことについて思慮深く生きていってください。

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