オルセー 伝統の終着駅
パリにオルセー美術館があります。もともとは、それはそれは美しい駅舎で、駅として使われなくなってから、美術館に改装されたのです。
ここに印象派から世紀末芸術、アール・ヌーヴォーに至る絵画、家具などが所狭しと並んでいます。美術好きにはたまりません。美術館の外に出られなくなってしまいます。
考えてみると、19世紀までの絵画がもとの駅舎だったところに飾られているのは、象徴的なことかもしれません。19世紀までは自動車もなかったですし、皆ルノアールの絵の中の人物が着ているような素敵な服装をしていました。しかし、そういう素晴らしい西洋の伝統社会は、20世紀には完全に崩れてしまうのです。
伝統が崩れた後、人間は芸術活動として自己の内面を外化した絵を描くようになります。
シュールレアリズムの絵画などです。オルセーにはシュールレアリズムはありません。ですので、オルセーは伝統絵画の終着駅でもあるのです。美しい偶然と言えるでしょう。