皆さんお早うございます。短い春休みでしたが、季節はいつの間にか目の覚めるような新緑の季節になっています。自然界に新しい命が躍動し始める春は、キリストの受難と十字架上の死からの復活を祝う季節とも重なります。この大きな喜びと希望の中で、新しい学年を始めることが出来るのは大きな感謝です。
昨年は、晃華学園中学高等学校が創立されて50年目という、大事な節目の年でしたが、今年、2013年度は、中高が次の50年に向かって新たな歩みを始める、再出発の年であると考えております。新しい学年、新しい学期のはじめに当たって、先輩たちが築いてくれた学園のよき伝統を受け継ぎながら、この土台の上に新しい晃華学園中高を自分たちの手で作っていくのだと、気持ちを引き締め、今日からの1年間をどう過ごすかをしっかり考え、覚悟して動き出しましょう。
新しい学年の出発に際し、皆さんにお願いしたいことが幾つかあります。
一つは時間をよく使うことです。一日は24時間、これは誰にとっても24時間です。世の中には不公平なこと、不平等なことが随分、多いのですが、一つだけ平等なことがあるとすれば、それは時間です。一日は誰にとっても24時間です。但し、この平等に与えられた時間をどう使うかが人によって実に様々です。一日に限っても時間を上手に使う人とうまく使えない人の差はとても大きいのです。
高3生の中には「中学入学はつい昨日のことのような気がするのに、もう卒業学年」か、という思いでこの始業式に臨んでいる人もいるのでは・・・と思います。時間はあっという間に過ぎ去ってしまうもの、まさに『光陰矢の如し』でしょう。でも中学生には恐らく、この話しはピンと来ないかもしれません。中学生―人間の一生のうちで最も若々しく、生命観に溢れている時期―にとっては「人生は永遠に続く(時間はたっぷりある)」と感じられるものだからです。しかしそうではない。
このように時間はあっという間に過ぎ去るもの、一寸、一刻も無駄に出来ない貴重なものと感じるか、時間はまだまだたっぷりあると感じるかで、一日に限っても時間の使い方に大差がつきます。まして3年間、6年間では、上手に時間を使う人とうまく使えない人の差は無限大に近くなります。従って心身とも伸び盛りの中高6年間を、どう過ごすかということはその人のその後の人生を左右するほどの決定的な意味があるということを、是非、知っておいてください。
私たちが意識していようといまいと時間は刻一刻と流れていき、中高6年間に出来ることは限られています。だから自分がやるべきこととやりたいことを全て並べてみて、限られた時間の中で全てをやることは出来ないとなれば、何にどのくらいの時間を割くのか、優先順位をつける必要がありますし、どんなにやりたいことでも、断念しなければならないこともあります。
3学期修了式で、有能なビジネスマンは目標を達成するために、手帳を上手に使ってスケジュール管理をしますが、そのスケジュール管理のやり方に学んで、皆さんも春休み中に「手帳を活用した時間管理のスキル」を身につけるように努力し工夫してみてください、と話しましたが、どうでしたか。「学ぶ力」の土台はよい生活習慣と生活のリズムですが、よい生活習慣と安定した生活のリズムを作るのに、手帳を上手に使って時間管理、スケジュール管理をするスキルを身につけ、時間の大切さに気付くことが大切だと思います。
次に皆さんにお願いしたいことは、私たちは人との関わりの中で生きていますが、何を相手から求められているかを察知する鋭敏な感受性を養ってほしいということです。そもそも私たちの言動(言葉、動作)は、表現の際の心構え次第で、結果として生まれたものには大差が生じるものです。
人との出会いにおいて、応対する時の呼吸と洞察力一つで、出会いは実り豊かなものにもなり、ぶち壊しになったりもします。明るい表情や相手を思いやる心から生まれる言葉、動作は、爽やかで気持ちのよいものですが、無自覚な言動、粗雑な言葉や動作は人を傷つけたり、人の心を暗くしたりします。普段、何気なくやっている行動で、他人への影響が皆無というようなものは殆どありません。必ず人によい印象を与えるか、不愉快な思いをさせるかのどちらかですが、今年度、皆さんに次のことを特に期待しています。
1.新年度から運行を始めたスクールバスを乗降する際の皆さんの態度、行動が、通りかかった人々に爽やかな印象を与えるものであってほしい。
2.皆さんの自然な会釈や気持ちのよい挨拶が、学園を訪れる方々の心を和ませるものであってほしい。
3.制服を清楚に美しく着こなし、見る人の心を爽やかにしてほしい。
4.整理整頓清掃の徹底によって学習環境をいつも美しく整え、学習や諸々の活動の成果を大いに高めてほしい。
いずれも何を相手が求めているかを察知できる鋭敏な感受性、他人に対する思いやりと優しさがあれば、人を不愉快な気持ちにすることはないでしょうが、そのためには自分の中にいつも他人のための場所を用意することが必要で、時には自己犠牲も求められます。「愛ある生き方」の出来る人になるためにお互いに努力しましょう。
最後に自分は「何のために勉強するのか?」、新年度のスタートに当たって各自、しっかりと考えてください。人間の頭脳は140億の細胞からなっていて、その重さは1300〜1500グラム、東京23区の広さに匹敵するコンピュータ以上の働きが出来るのだそうです。ですから頭脳をフル活用すれば凄い働きをし、必要なものを創造し、様々な夢を実現することも出来ますが、通常、人はその3〜5%しか使っていないということです。大変な宝の持ち腐れをしています。ですから有能か無能かは、自分に与えられている潜在能力をどれだけ開発できるかどうかにかかっているわけです。目標を持って粘り強くこつこつと努力を継続することが大事だろうと思いますが、努力と熱意でどんなに高い能力を獲得しても、その能力が自分と周囲を必ずしも幸せにするわけではありません。その人の考え方が利己的で悪いことのためにその能力を使えば、周囲の者は苦しみますし、当の本人も人の恨みを買い、人から嫌われますから、心の平安はありません。獲得した高い能力を世のため、人のために善用した時に、はじめて人々から喜ばれ、自分も喜びに満たされて幸せになります。能力を高める努力と共にその能力を社会と隣人の真の幸せのために役立てることが出来るように、人間性を高める努力もしていかなければなりません。
神の祝福と聖母のご保護により、この1年が皆さんにとっても、学園にとっても素晴らしい実りの年となるように祈りながら、式辞といたします。