皆さん、おはようございます。
先週の土曜日は高校の部のスピーチコンテストでした。お疲れ様でした。興味深いテーマばかりで、私も大変勉強になりました。スピーチコンテストには、Recitation DivisionとSpeech Divisionがありました。Speech DivisionでもSpeechする前にRecite、すなわち、自分のSpeech文を暗唱することが求められますので、結局、全員、とにかくRecite暗唱することになるのです。では、なぜ、Recite、Recitation、暗唱するのでしょうか。暗唱する意味はどこにあるのでしょうか。
ここで、商業高校卒業で外交官になられた藤田順三さんのことをお話したいと思います。
藤田さんは都立第5商業高校を卒業後、銀行に就職されましたが、ある時、外交官になろうと思われたそうです。外交官試験は超難関試験の一つです。ちょっと考えただけでも、商業高校卒では無理ではないか、と思う方が普通です。それでも藤田さんは、自分の人生を変えたいと思う一心で、英語については、徹底的にRecitationされたそうです。銀行勤務の傍ら寝ても覚めても英文の暗唱です。レ・ミゼラブルの対訳本の150頁でした。暗唱だけなら、そうですか、で済む訳ですが、やり方が尋常ではありませんでした。第1日目は第1頁目を暗唱し、第2日目は第2頁目の暗唱ですが、第2頁目のみの暗唱ではなく、第1頁から始めます。第3日目の第3頁目は、また第1頁から始めます。すなわち、その前の頁のRecitationが終わってから、その日の頁に入ることになります。それでも初めの内は良いのですが、頁が進むにつれてRecitationの量は膨大に膨れ上がります。最後の150頁の場合は、149頁の暗唱が終わってからということになりますが、それでもやり抜かれたのです。英語をこのような方法で勉強された結果、高校卒業の6年後、晴れて外務省に入省され、後に大使にまでなられました(参考文献:藤田順三(2017)『高卒外交官実践!人生を変える努力』海竜社)。
では、このような大きな目標を達成するには何が必要なのでしょうか。Speech Contestの中にもありましたが、やはりGritを鍛えることが重要です。目標を達成するためには、Grit、すなわち粘り強くやり抜く力を磨くことが求められます。簡単ではありませんが、普段から、自分のGrit力、やり抜く力をしっかり磨くように心掛けましょう。
次に、Recite暗唱することとは、どのようなことでしょうか。考えてみましょう。単なる暗記ではありません。暗記した後、声を出して始めて暗唱したことになります。暗記して、自分の内なるものにして、最後に声に出して言うことになります。初めは文章を見ながら声に出していたことが、文章を見なくても声に出して言えるようになるのです。すなわち、自分の内なるものにしてから、声に出します。自分の内なるもの、すなわち自分自身そのものになったものを、声に出すことになります。皆さんが毎日唱えていらっしゃる「主の祈り」も一種の暗唱Recitationなのです。高3ならば、中1から数えても、もう既に1500回~2000回もRecitationしたことになります。「主の祈り」は皆さんの中に溶け込み、皆さん自身になっているはずです。暗唱Recitationとは、暗唱する文章が、そしてその文章に込められている思いや教えが、暗唱する人そのものになることです。
私も、目下、Recitationしているものがあります。If I must die, you must live to tell my storyで始まるRefaat Alareerさんの詩です。2023年に、ガザで娘さんと共に一瞬にして爆死された詩人の詩です。この詩はYouTubeで観ることができますので、皆さんも時間があれば観てみてください。この詩をRecitationすることで、Refaat Alareerさんと一体感を持つことができるような気がしています。皆さんも何かRecitationするものを見つけてReciteしてみてはいかがでしょうか。これで今日のお話は終わります。