イグナチオ教会でのイースター・ミサはいかがでしたか?
柴田神父様のお話では、親しい人を失うことは、本当に悲しいけれども、残された人々は、それを通じて生きる意味に気づき、前を向いて歩んでいけるという、心に沁みる内容でした。身近な人の死を経験した人にとっては、特に強く響いたと思います。十字架上で息を引き取ったイエスが復活し、弟子たちが新たな命に目覚め、大いなる働きを始めたことと重ね合わせると、奇跡とは決して特別なことではなく、私たちの生活の中でも様々なレベルで起こっていると思います。私にとっては、新しい朝を迎えられたこと、こうして皆さんと学園生活を送れることも奇跡の一つです。
晃華学園中高は創立から60年が経ちました。この間、ずっとこの学校が守られてきたのは、ひとえに生徒の皆さんのお陰だと思っています。小さな祈りが大きな変容につながるエピソードを紹介しましょう。
先月の、中学3年生の修了式の出来事です。中学校の卒業証書を受け取り、芝生でクラスごとに写真撮影を終えた後、G先生にお願いして、学年全体の集合写真を撮っていただきました。
この日、ひそかにサプライズを用意していました。3年間生徒たちを見守ってきた学年主任の先生にお礼をしたいと、クラス委員を通して相談していたのです。学年主任は本当に大変な仕事です。様々な個性を持った生徒たちを指導しつつ、これまた個性的な先生たちの意見を調整しながら学年運営をします。LHRの企画、保護者会の準備、ハプニングが生じた時の対応など、あらゆる場面に立ち合います。主任の先生は、いつも金メダルのような笑顔で、生徒も担任も包んで下さっていました。全員で感謝の気持ちを表せるといいね、と話して、あとはクラス委員に委ねました。当日は、集合写真を撮った後、クラス委員が「ちょっと待ったあ!」と声をかけ、何も知らないはずの学年主任の先生を芝生の中央に招いて、遠巻きに生徒たちを見守っていらした保護者も立ち合う形でサプライズ・セレモニーが始まりました。
メッセージボードと花束贈呈が終わった後、最後に全員で「群青」の合唱が始まったのです。この曲は、東日本大震災で大きな被害を受けた福島県南相馬市の小高中学校で作られました。津波の犠牲になった友人、遠くの地で暮らす同級生に思いをはせながら、音楽の先生と生徒たちが一緒に作った曲で、離ればなれになった人々が故郷で再会することを願って、「また会おう、群青の町で」という歌詞で締めくくられます。福島の人々にとっては、復興のよりどころとなり、今では「卒業ソング」としても、全国の学校で歌い継がれる曲となりました。中3の後半から、公民の授業、LHRなどを通して、学年全体で取り組んできた「復興」に関する学習の中でこの曲を紹介し、静修会で福島からいらしたシスターのリクエストを受けて、全クラスで練習した曲でした。
また、「goals」というSDGsの活動をするグループが、福島県の綿花農家さんの協力を得て、収穫されたコットンからタオルをデザインしたことは、生徒活動報告会でも発表がありました。5色のタオルの色は、福島県の自然を生かしており、その中には海を象徴する「群青色」も含まれています。津波の甚大な被害に遭っても、福島の人々は美しい青い海を愛していることが、「群青」の歌詞からも伝わってきます。「goals」の取り組みが環境大臣賞という形で評価され、活動メンバーと一緒に被災地ツアーに参加した時、廃炉まであと30年もかかるといわれる原発がそびえる海を見ながら、若い世代にこの負の遺産を残してしまったことへの申し訳なさ、一方で、東京で暮らす若者が、福島で生きる人々とのつながりを持ち続けてほしい、という強い思いもこみ上げてきました。「群青」は傷ついた人々を慰め、つらい状況の中でも、再会できることに希望を託す名曲です。この曲を晃華学園で歌い継いでいきたいと祈り続ける中で、生徒たちが歌う「群青」を聞いたとき、私の小さな悲願が生徒たちに届いていたことに気づき、涙があふれてきたのです。
晃華学園の生徒たちは、教員の思いをしっかりと受け止め、期待をはるかに上回る素晴らしい成果を上げる人たちだと確信しています。いつか福島の人々と晃華学園の皆さんが、一緒に「群青」を歌うことが、今の私の願いでもあります。来週、再び「goals」のメンバーと福島に行ってきます。「群青」の調べが皆さんに届きますように。