2019年度

「私は教科のここが好き!」その④(中学進路通信)

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投稿日2019/6/11

晃華学園では、進路指導の一環として全学年でオリジナルの進路通信を発行しています。

学習に対して前向きに取り組んでもらうため、今年度は中学生の進路通信で『私は教科のここが好き!』というシリーズを企画しました。
これは、教員が自らの担当教科の好きなところを紹介し、学ぶことそのものの楽しさを実体験を交えて紹介することで、楽しんで学習に向かう姿勢の大切さを伝えていこうというコーナーです。

今回は、中学1年生の書道の教諭からの寄稿です。


 

「私は書道のここが好き!」

こんにちは。書道を担当している○○です。

皆さんの得意分野は何ですか?私の小・中・高の学生時代の得意分野は、ずっと書道(習字)と絵でした。
私が習字を習い始めたのは3歳、絵を習い始めたのは小一の時です。その効果があったのか、小学校では習字の時間や図工の時間に模範作品としてほめられたり、いろいろな展覧会で入賞したりするようになりました。

中学では、市の席書大会(その場で課題を与えられて一斉に書き初めをする大会)に学校代表で出場したり、また、小学校では当時住んでいた兵庫県の絵画コンクールで大賞(内閣総理大臣賞)をもらったりしました。その都度、先生にはほめられるし、友達にはすごいと称賛されたのですが、自分では手放しで喜んでもいられない、という気持ちでした。

確かに書道と絵は、私の得意分野になってはいたのですが、席書大会に出れば他校の代表の生徒の方がはるかに上手だと感じていましたし、高校で美術部に入ったら、私よりはるかに上手な先輩が芸大受験に失敗していました。「上には上がいる。」という現実を突きつけられて、苦しい気持ちもあったのです。

 

さて、得意分野の書道と絵ですが、どちらが好きかと聞かれると、迷いなく絵と答えていました。なぜなら絵は、色を自在に使えて何をどう描いてもよく、先生からの指導も厳しいものではありませんでした。一方書道は、すごく集中して、何度練習してもなかなか思い通り出来ず、やっと出来てもまた次に乗り越えなければならない課題があるという、終わりのない、厳しいものと感じていました。
絵のカラフルな世界に比べると、書道は白黒で味気ないものに感じられ、どちらかといえば、嫌いでした。

ところが振り返ってみると、書道は3歳で習い始めてから今に至るまで、ほぼ途切れることなくずっと続いています。そして、職業として教えることもしています。私のこれまでの人生において、好きだった絵よりも苦しいはずの書道の方が、とても大切なものになっていたのです。
今でも美術館へ行って絵を見たりするのは大好きですが、昔のように絵を描くことはしなくなりました。いつの間にか、終わりのない書道の道に必死で取り組んでいました。

書道は、何度も練習しても出来ないときはまったく出来ず、それでも次の日、又次の日と取り組む作業はとても苦しいものですが、だからこそ、それが出来た時の喜び、達成感はとても大きいものです。

そのようなことを繰り返すことによって、技術が積み上げられ、感覚が磨かれていくのと同時に、自分への自信も積み重なっていくのを感じることが出来ました。そして気付くとそんな書道という終わりのない道を歩んでいる自分に自信と誇りを、少しですが持てるようになっていきました。

今では私にとってかけがえのない、とても大切なものになりました。そして今感じるのは、絵に比べると好きではなかった書道は実は、簡単に「好き」と言えるほど単純なものではなく、もっと奥の深いものだったのだ、と気づきました。そして今では、とても好きだと言えます。

 

皆さんも自分のまわりの好きでないもの、苦しいもの、あるいは、特に気にもとめていないもの・・・それらの中に、いつか自分の人生において、とても大切なものになるものがあるかもしれません。
一度取り組んだものは、続けられる環境があるならば、続けてゆくことが大切だと思います。一生懸命続けていると、自然に道が開けて、たとえ途切れそうになっても、不思議なことに、その道がつながってゆくこともあると思うのです。そして、一つのことを続けていくことで、そのものの本当の楽しみが感じられると思います。

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