晃華学園では、進路指導の一環として全学年でオリジナルの進路通信を発行しています。(以前の紹介記事はこちら)
学習に対して前向きに取り組んでもらうため、今年度は中学生の進路通信で『私は教科のここが好き!』というシリーズを企画しました。
これは、教員が自らの担当教科の好きなところを紹介し、学ぶことそのものの楽しさを実体験を交えて紹介することで、楽しんで学習に向かう姿勢の大切さを伝えていこうというコーナーです。ここでは、その内容を紹介します。
今回は、数学科で、この企画の発案者でもある、中学2年生の学年主任の話です。
何のために勉強するのでしょう?
「様々な知識や教養を身に付けるため。自分の成長につながるし、将来きっと役に立つ。他人を幸せにするためにも必要」と、晃華生の誰もが模範的な答を言うでしょう。でも、理屈では分かっているけれど、日々の勉強は正直ツライ…と感じている人は多いのではないのでしょうか。
この問いに、ストレートに「面白いから」と答えた人がいました。え~そんな人いるの?と思うかもしれませんが、ほら、すぐそばにいます。先生方です。そこのおばあちゃん先生も、お兄さん先生も、昔は皆と同じ中学生だったのです。勉強しているうちにある教科の面白さに気付いてとりこになり、ついには職業にまでしてしまった人々です。そう、実は勉強は面白いのです!
シリーズ「私は教科のここが好き」では、先生方がなぜその教科を好きになったのか、その教科の魅力を語ってもらいます。トップバッターはこの企画の言い出しっぺの私です。
「私は数学のここが好き」
幼少の頃からなぜか数が好きでした。身の回りの本やラベルに数字を見つけては喜ぶ幼稚園児でした。どの車にも数字がついていることを発見してからは、家の近所をぐるぐる回って、駐車している車のナンバープレートの数を書き写すのが楽しみでした。今考えると相当怪しい行為ですが。
数を数えるのも大好きでした。特にお金はただ枚数を数えるだけではなく、種類があって少し複雑なので、小学校時代よく貯金箱の小銭を出しては10枚ずつ積み上げて楽しく数えていました。(今でも小銭の山を前にすると興奮してしまいます。)
また、漫画は3回楽しめる最高の遊び道具でした。1回目は読んで楽しい。2回目は塗り絵にして楽しい。3回目は数えて楽しい。これは吹き出しの数や、枠からはみ出して描かれている女の子の数、きらきら光る状態を表す星の数、舞っている花びらの数まで数えて、「こっちの作品の方がたくさん花が飛んでいる」などと分析して遊んでいました。
皆さんは数学というと授業やテストで解く無味乾燥な問題のことばかり考えるかもしれません。しかし、数学の題材は日常の身の回りにあふれています。数量、形状、変化の様子…など、気になることを調べたり、推測したり、何かを創造するときに、私達は数学をよく使っています。
数学は人が自然界を計測し、分析するために作った定規のような物です。だからぶれがありません。AさんがやってもBさんがやっても1+1=2です。今日の気分によって答えが変わることもありません。5は6の隣は嫌なんじゃないかな…などと、数字の気持ちを考えてあげる必要もありません。私が数学を好きになった第1の理由は、この単純明快さです。決められたルールに沿って行うスポーツのような感覚で好きでした。
中学時代のある日、家にあった百科事典をぺらぺらめくっていると、そこに円の式とグラフが載っていました。当時の私はまだ直線のグラフしか習っていなかったので、思わず「何だこれは!?」と食いついてしまいました。
本当にこの式が円になるのか半信半疑の私は、早速xとyの対応表を作り(2乗した結果の数から元の数を求められる平方根表が大活躍しました)、方眼紙に座標平面を書き、1つ1つ点を打っていきました。80点打ちました。すると…おおお…本当に円が現れたのです。この感動は忘れられません。ヘレン・ケラーが手に流れる水から、物に名前があることを理解した有名な場面がありますが、私はこのとき世の様々な直線や曲線も、すべて式で表せるのではないか?と思いました。こうして私は、噴水や花火を見ては「ああ、きれいな放物線だなぁ」とか、校庭のトラックを見て「これは楕円じゃないよね…」などとつぶやくようになりました。
式とグラフが自分の中でつながったこの体験は、私にとって大きなものでした。同じ1つの円でも、幾何学的な図形として、関数の式として、方程式の解の集まりとして、座標平面上のグラフとして捉えることができます。それまで別物と思っていた数学の教科書の各単元に関連性が見えてきて、1つの物を様々な角度から分析できるところに、数学の面白さを感じました。
私はこの他にも、角の3等分線は作図できないと聞き、これまた納得できずにずいぶん挑戦しましたが、勿論できませんでした。「点が集まって直線や平面になるって言うけど、点には厚みも長さもないはずだから、いくら集まっても長さや面積は0じゃないか?」とか悩んだりしました。そういう一見無駄な作業が、とても楽しかったです。
私が数学の道を選んだのは、決して成績が良かったからではなく、疑問や面白いと感じることが多かったからです。皆さんも是非「なぜだろう?」「へえ面白い!」と感じるものを大切にして下さい。