2018年度

ゆずり葉の詩(2018年度 卒業式式辞)

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投稿日2019/3/31

行きつ戻りつの春の気配から、木々の芽にも確かな春の息吹を感じるようになった今日の佳き日、卒業生の皆さんに卒業証書を授与いたしました。ご卒業おめでとうございます。そして、保護者の皆様にも、心からお祝い申し上げます。また、本日はご来賓のご臨席を得て、平成30年度の卒業式が挙行できますことは、私ども関係者にとっても、大きな喜びでございます。改めて、感謝申し上げたいと思います。

さて、卒業式の告辞として何を話そうか、と思いめぐらしていた時に思い出したのが、「ゆずり葉」という言葉です。私が中学1年生だった三学期の終わりに、クラスの担任の先生が、“クラスの文集を作りましょう”、と提案してくださって、その文集のタイトルが「ゆずり葉」でした。久しぶりに思い出したこの言葉、実は、詩の題名なのです。中1の時に習った詩だったのだと思います。先生が提案してくださったのか、文集委員が提案したのか覚えていませんが、文集の表紙にゆずり葉の絵と言葉が書かれていたのを覚えています。

「ゆずり葉」とは、植物の名前で、初夏に新芽を出しますが、古い葉は新しい葉が生長するまで木に残り、新しい葉に自分のあとを譲るようにポロリと落ちるという特徴があるので「ゆずり葉」という名前がついているそうです。

卒業式は、卒業生が在校生にバトンタッチをする日なので、この詩が卒業式の告辞としてふさわしいかなと思いました。先ず、詩を読みます。

「ゆずり葉」   河井酔茗(すいめい)
子供たちよ、
これはゆずり葉の木です。
このゆずり葉は新しい葉が出来ると
入れ替わって古い葉が落ちてしまうのです。

こんなに厚い葉、
こんなに大きい葉でも
新しい葉が出来ると無造作に落ちる
新しい葉にいのちを譲って
子供たちよ、
お前たちは何を欲しがらないでも
凡てのものがお前たちに譲られるのです
太陽の廻る限り
譲られるものは絶えません
輝ける大都会も
そっくりお前たちが譲り受けるものです
読み切れないほどの書物も
みんなお前たちの手に受け取るのです
幸福なる子供たちよ
お前たちの手はまだ小さいけれど

世のお父さん、お母さんたちは
何一つ持ってゆかない
みんなお前たちに譲ってゆくために
いのちあるもの、よいもの、美しいものを
一生懸命に造っています

今、お前たちは気が付かないけれど
ひとりでにいのちは延びる
鳥のようにうたい、花のように笑っている間に気が付いてきます

そしたら子供たちよ
もう一度、ゆずり葉の木の下に立って
ゆずり葉を見る時が来るでしょう

ここに座っている卒業生の皆さんは晃華学園での学校生活で培ってきたものを、特に下級生にとってあこがれの先輩としてクラブ、同好会、課外活動の中で、又、高2でSCの各委員会の委員長・副委員長として如何なく発揮し、学校の行事をリードしてくれました。幾つか思い出すと、先ず4月のイースター行事ではミサの中で、合唱コンクールで歌ったラテン語のミサ曲を歌いました。後輩たちは先輩たちの美しい歌声を聞いて、自分たちも先輩のように歌えるだろうか、歌いたい、と振り返りに書いてありました。5月の運動会では、率先して動き、高1以下の体育祭実行委員たちを引っ張っていきました。秋の文化祭のためには1学期から準備を始め、夏休み返上でしたね。文化祭は大成功で、お客様たちは皆喜んでお帰りになりました。最後に合唱コンクール、委員たちの働きのおかげで、合唱コンクールは、会場にいた人たちの心に美しいハーモニーを刻んでくれました。

今私が例として挙げた以外の各場面でも皆さんはこの学園の文化を、そして、いのちを後輩に伝えるべく育んでくれました。後輩たちは、その文化を譲り受け、受け継いで自分たちなりにこの晃華を育て続けてくれることでしょう。命を吹き込み続けてくれるでしょう。どうぞ、卒業した後も後輩たちを応援してあげてください。

ところで、この詩は、皆さんが後輩たちに譲り渡すだけではなく、皆さんも又譲り受ける者であることを教えてくれます。

皆さんが巣立っていく社会は人生の先輩たちが作ってきた社会で、皆さんが譲り受けるものです。具体的にはお父さんやお母さんです。詩ではこのように表現されています。

お前たちは何を欲しがらないでも
凡てのものがお前たちに譲られるのです
太陽の廻る限り
譲られるものは絶えません

世のお父さん、お母さんたちは
何一つ持ってゆかない
みんなお前たちに譲ってゆくために
いのちあるもの、よいもの、美しいものを
一生懸命に造っています

お父さんやお母さんはゆずり葉の心と同じ思いで皆さんを6年間見守って来たでしょうし、これからも皆さんに譲っていくために “いのちあるもの、よいもの、美しいものを一生懸命に造って行ってくださいます“。ですから、お父さんや、お母さんに感謝することを忘れないでください。時が巡り、あなたたちがお父さんやお母さんから譲り受けたものを、今度はあなたたちも、新しいいのちに譲り渡すものとなっていくからです。それを今日心に留めていてほしいと願います。

最後に、もう一度「ゆずり葉」の詩を読んで、私の告辞といたします。

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