2018年度

数学×ルーブリック×ICT【数学科研究授業報告】

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投稿日2018/12/1

11月20日(火)中学1年D組のクラスで数学科の研究授業が行われました。
その準備と、当日の授業についてご報告させていただきます。

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晃華生の中には、関数分野の問題であれば難しい問題でもスラスラと解けてしまう生徒もいます。難関大学の過去問でも、こちらが想定していなかったエレガントな方法で解決することもあり、思考力の豊かさに驚かされることもあるほどです。
しかし、そのような関数的センスが秀でている優秀な生徒でも、空間図形になるとたちまち解けなくなってしまう、ということが珍しくありません。特に、数学Ⅲで頻出の回転体の体積を求める問題で、難しくない空間図形であるにも関わらず、形状がイメージできずに式を立てられないということはよくあります。
これは、晃華学園だけではなく、全国の高校生にもいえることではないでしょうか。

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考えられる原因の1つに、“空間図形の形状をイメージする”ということに集中する機会が少ないということが考えられます。
中学での空間図形の学習は、主に中学1年生での空間全般に関する学習と、中学3年生での三平方の定理の空間への応用に関する学習の2回です。このうち中学3年生での学習は、三平方の定理を活用できる形の空間図形に限られ、回転体はさほど学習しません。そのため、中学1年生の段階で難しい回転体のイメージに挑戦してみるという経験が、後の学習の支えとなるのではと考え、今回は回転体を題材に研究授業を行いました。

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あわせて今回は、ルーブリックを用いた評価も研究対象としました。
ルーブリックを用意する目的は、定期考査の点数のみで評価をするのではなく、それぞれの観点における概念的な評価基準を設定することで、思考の過程や豊かさなどといった“テストの点数以外の部分”を評価することです。これは、これからを生きる生徒を指導する数学科にとって非常に重要なことです。この研究授業をきっかけに、晃華学園の数学科が大切にしていることは何か、生徒に備わってほしい資質は何かということを、数学科全体で改めて確認し、ルーブリック表を作成しました。
研究授業で得られた成果を、全体の協議会で共有し、学校全体のノウハウとして蓄積していきます。

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授業見学には、数学科だけではなく様々な教科の教員が参加。教室内には大量の教師、という異様な状況に、授業直前の生徒たちはやや興奮気味でした。
黙想・挨拶とともに授業がはじまり、課題解決がはじまると、生徒たちは一気に学びの姿勢に入ります。周りと相談する生徒、一人じっくりと考えこむ生徒、とりあえず図を描いてみる生徒など、皆思い思いの方法で問題にアプローチしていきます。

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問題は、空間図形を回転させてできる回転体という、中学1年生にしてはかなり難しい内容です。
しかし、「解けなくてもいいから一生懸命考えてみて」というこちらの声掛けに応えるように、生徒は一生懸命考えてくれました。

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課題解決の最中、ある生徒から「先生、この間使ったiPad(にあるGeogebraという図形描写アプリケーションの中)の図が見たいのですが、iPad使ってもいいですか」と尋ねられました。
教室内のラックの鍵をあけ、自由に使用してよいとしたところ、クラスの半数近くの生徒が使い始めました。ICT機器が思考ツールの1つとして定着していることが感じられます。

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時間をとって考えた後は、クラス全員で課題解決に取り組みます。
今回は図を描くことが課題です。生徒たちの発言を引き出しつつ、その発言をもとに、黒板に正解の図を描いていきます。

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正しい図を黒板に描き、生徒がきちんと写し終えた後、難度の高い(3)・(4)を中心に、先述のGeogebraを用いて図形を描写しました。
回転の様子と、回転体ができていく過程が目に見えるため、空間図形をイメージすることへの大きな助けになります。数学におけるICT活用の有効性が高い例の1つです。
スクリーンに回転体を表示すると、生徒から「おー!すごい!」「ほんとだ!確かに曲がってる!」と、とても良い反応がありました。1人1人が課題に積極的に臨んでいることがわかります。

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授業後、生徒のワークシートを確認すると、誤答も正答も含めたたくさんの図が描かれていました。何度も何度も図を描いて、空間図形をイメージすることに集中してくれていたようです。
また、駆け寄って「今日の授業とても面白かったです!ありがとうございました!」と伝えてくれた生徒もいました。授業を行った側としては、とても嬉しく感じました。
ただ淡々と正答を教わるだけの授業では得られなかったものを、生徒たちはたくさん学んだのではないでしょうか。

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晃華学園の生徒には、自らの能力を用いて他者を幸せにするという大切な使命があります。
回転体の図を描けるようになることは、それには直接は結びつかないのかもしれません。しかし、課題に向かって自分なりのアプローチを行い、ときには相談し、またあるときにはテクノロジーを用い、全員で取り組むときはきちんと傾聴・反応し、得られた学びを自分のものとする能力は、晃華生の使命には欠かせないのではないでしょうか。
数学の授業は、そんな能力がついていくことをこっそり期待しながら、行われています。

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