2017年度

高校1年生 コラボ授業「囚人のジレンマ」(政治経済×数学)

この記事は1年以上前の記事のため、内容が古い可能性があります。
投稿日2018/3/27

晃華学園では、一つ課題を複数の教科の知識を使って考える「コラボ授業」を行っています。将来、生徒たちが自分のため・人のために力を発揮しようとする時に、一つの教科だけの知識で良いわけがありません。
生徒たちが、教科の枠にとらわれず、知識を活用し、自分とその周りの人々を幸せにして欲しい。そんな願いを込めて、晃華学園ではコラボ授業を行っています。

今回は、政治経済と数学のコラボ授業実践をご報告させていただきます。
政治経済と数学というと、あまり関係のない教科であるように感じてしまう生徒は多いものです。しかし政治学と経済学のどちらも、仮定に基づいた厳密な論理性なくしては成立しません。つまり、政治経済は数学的要素を多く含んでいる、と考えることができます。その典型例として、今回の授業ではゲーム理論の“囚人のジレンマ”について学習しました。

囚人のジレンマとは、数学者のアルバート・タッカーが考案したとされている、2人の囚人を題材にしたゲームです。ゲームといってもTVゲームなどといったものではなく、「ゲーム理論」という学問の中における、数学的な試行のことを指します。実際のワークシートをご覧ください。


この場合、実は2人の囚人はいずれも自白をすることになります。まず、生徒にはその理由を書いてもらいました。その際、「誰が読んでも納得できるように客観的に書くこと」そして「仮定に基づいた数学の証明のような文章にすること」という2つに注意するようアドバイスをしました。書き始めた生徒たちの表情は真剣そのもの。どの生徒も詳細に記述をしてくれました。実際に生徒が書いた文章を見てみましょう。

『自分が黙秘している状況から考える。
(i)相手が黙秘し続けているとき、自分が黙秘していても2年、自白しているときは0年。
(ii)相手がすでに自白してしまっているとき、自分が黙秘していると10年、自白すると5年
(i)、(ii)のいずれにおいても、自分の利益を追求するため、自分は自白をする。これは相手も同じだから、お互い自白を選ぶ。』

『Bについて
・Aが黙秘した場合、Bが黙秘すると懲役2年となり、Bが自白すると懲役0年となる。
・Aが自白した場合、Bが黙秘すると懲役10年、Bが自白すると懲役5年となる。
よってBについては、Aが黙秘した場合においても自白した場合においても、自白した方が懲役が短くなる。
Aについても同様のことがいえるので、AとBは自白する。』
seito1

 

場合分けを行い、比較検討・序列化し、それぞれの囚人がどのように選択をするのかが論理的に記述されています。数式やら公式やらは登場しないものの、まさに数学の証明問題のようです。

生徒の説明にもあるように、個人の利益を追求している限り、2人の囚人は自白をしてしまいます。これをナッシュ均衡といい、各々が個人の利益を追求したときに発生する状況を表します。しかし、2人とも自白をしてしまった場合に比べたら、2人とも黙秘をした場合の方が刑が軽く、望ましい状況です。これをパレート最適といい、全体にとっての利益が最大となる状況を表します。
このナッシュ均衡とパレート最適が一致していない状態の1つが「囚人のジレンマ」である、ということになります。
2

囚人のジレンマの説明を記述した後、生徒はこれをさらに発展させ、日常の中の「囚人のジレンマ」のような現象を自分で考えてみました。
初めは「そんな難しいことできるかな…」と口にしていた生徒もいたものの、書き始めたらどんどんペンが進み、最終的に素晴らしい事例が数多く出来ました。その一部を紹介します。

生徒A
6

生徒B
3

生徒C
4
生徒D
5

授業中に生徒が書いた内容は、プロジェクターを用いてその場ですぐに共有しました。
IMG_1454

 

教員に質問したり生徒同士で相談したりしつつ、生徒達は高いクオリティの事例を作ってくれました。難しい問題であったにもかかわらず、時間が過ぎても「もっと考えたい!」という生徒が出るほど、生徒は熱中して取り組んでくれ、授業をしている側としてはとても嬉しく感じました。
作成後、近くの席同士で事例を紹介しあう時間をとったところ、「○○さん、すごい!」「説明が細やかでいいねー」などといった会話が広がりました。こういった高め合いが自然と行われていくのも、他にはない晃華生の良さであるように感じられます。

IMG_1455

 

今回の授業の目的の1つに、生徒達に「説得上手」になってもらう、というものがあります。
これからの世の中がどのように変化していこうとも、私たちは必ず他者と関わりながら仕事や生活をしていきます。それはつまり、他人と協力しなければ生活が出来ない部分がある、という事でもあります。
自分にも相手にもメリットがあるという事をいかに論理的にわかりやすく伝えるか。それは、将来自らの力をもって他者を助けることを使命とする晃華生にとって、必要不可欠な能力なのではないでしょうか。晃華生の成長は、授業から始まります。

高校1年生の数学の授業実践はこちら

中学1年生コラボ授業「”人に優しい”食事を考える」はこちら

page top