「法王になる日まで」をみて
今日は今年見た映画のなかで一番印象に残った作品を紹介します。それは現在活躍している人物の半生を描いたものです。彼のツイッターのフォロワー数は4000万人を超えました。トランプ大統領のツイッターの4200万人に追いつく勢いです。アルゼンチン生まれでもうすぐ81歳になる、世界の有名人の一人です。新聞記事を生徒玄関に掲示したこともありますが、主人公がだれかわかりますか?そう教皇フランシスコです。「ローマ法王になる日まで」というタイトルで、職員室前にもパンフレットが積まれています。
彼はアルゼンチン人として初めて教皇になった方で、上智大学の母体である、イエズス会という修道会の司祭です。本名はホルヘ・マリオ・ベルゴリオと言い、若いころには日本への宣教希望があり、彼の教皇メッセージには日本のキリスト教徒が鎖国時代の信仰守り抜いたことについての言及もあります。私はこの映画で初めてアルゼンチンという国に軍事政権の時代があり、それが彼の司祭として管区長や神学校の院長として働いた時期に重なっていたことを知りました。たとえば貧しい人々のための教会活動であっても、軍事政権にとって反政府的活動とみなされると、容赦ない拷問が繰り返されることが実際に起こっていました。拷問の対象は神父、信徒、恩師など彼の親しい人々も巻き込まれていきます。私は遠藤周作の「沈黙」も見ていましたが、その拷問シーンより恐ろしい場面が出てきて思わず耳と目をふさいでしまう瞬間がありました。江戸時代ではなく1970年代から80年代の出来事であり、はるかに現実的で、恐怖に襲われたのです。映画では、司祭として社会的に追い詰められた人々や、弱い立場の人々に寄り添う生き方が、前面に描かれているようでした。私は、こんな厳しい現実に直面しながら希望を失わずに、熟慮の上行動するという本当の強さを持った人という点が印象的に残りました。
実際の教皇フランシスコも、バチカン内部の問題については厳しく、社会で弱い立場にいる人々を思いやって法王宮殿と呼ばれる立派な施設ではなく、質素な宿舎を使っています。教会の外に向けては、環境問題や核廃絶を訴え、難民の受け入れにも積極的に行い、ホームレス、病院や施設で生活する人々を訪問して支援を実行しています。2016年のアメリカとキューバの国交正常化に重要な貢献を果たしことも有名です。
映画の最後の方で彼はイエズス会管区長や神学院の院長という要職を解かれて、留学したドイツの教会で一枚の絵に出会います。「結び目を解く聖母マリア」という題で1700年に描かれたものです。その絵が印刷されたカードには「私たちの人生のもつれ、結び目を母の心で解いてくださるあなたのみ手に委ねます。私たちを苦しみや不安から解放してください」という祈りがかかれていました。彼はその絵に深い感動を覚え、実際今でも大切にしているそうです。皆さんも人間関係に悩むことは多いでしょう。そんな時にはこのマリア様を思い出して信頼して祈ってみてはいかがでしょうか。絵は図書情報センターでも見ることができますので興味のある方はどうぞ訪ねてみてください。