2015年度

2月20日の宗教朝礼

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投稿日2016/2/22

今日,2月20日はどのような日でしょうか?例えば,誕生日の著名人としては,ミスタージャイアンツとして知られる元プロ野球選手の長嶋茂雄さん,元格闘家として有名なアントニオ猪木さん,芸能人の志村けんさんなどがいます。

また,記念日としては, 日本では慶長12年(1607年),出雲阿国(いずものおくに)が江戸城において徳川家康らの前で踊りを披露したことから歌舞伎の日とされ,また,旅券(パスポート)の日やアレルギーの日とされています。

世界的には,2007年の国連総会決議で「世界社会正義の日(World Day of Social Justice)」と制定され,2009年から実施されています。12月1日の世界エイズ・デー,12月10日の人権デーといった国際デーと比べると歴史も浅く,馴染みが薄いかもしれません。「世界社会正義の日(World Day of Social Justice)」とは,poverty=貧困,exclusion=排除,unemployment=失業といった問題に取り組む努力を促進する必要性を認識する日と,国際連合はしております。

今日は,せっかくですので,社会正義=Social Justiceについて考えてみたいと思います。しかし,社会正義といっても私たちはなかなかイメージがわかないのではないでしょうか?社会正義とは,正義を社会において応用した概念とされますが,そもそも「正義」とは何でしょうか?辞典などを調べると,「正しい道義。人が従うべき正しい道理。」などとあります。しかし,皆さんそれぞれが「正義」という言葉を聞いて思い浮かべるもの,考えることは違ってくるかもしれません。古代ギリシアのアリストテレスなど古今東西の先人たちも「正義」についてさまざまな議論を展開してきました。

最近では,2010年にNHKにおいても「ハーバード白熱教室」が放送され,話題となったハーバード大学教授のマイケル=サンデルさんが,「正義」について考察した人物として知られています。彼は著書「これからの『正義』の話をしよう−いまを生き延びるための哲学」においてさまざまな例を取り上げ,「正義」に対する三つの考え方について考察しています。一つ目が,正義は「最大多数の最大幸福」という言葉があるように,功利性や福利を最大限にすることを意味するという考えです。二つ目が,正義は選択の自由を尊重することを意味するという考えです。三つ目が,正義には美徳を養い育てること(涵養すること)と,普遍的な価値である共通善について判断することが含まれるという考えです。

そして彼自身が支持する見解は,三番目の考えに属していると主張し,「公正な社会(社会的正義)は,一つ目の考えのようにただ効用を最大化したり,二つ目の考えのように選択の自由を保証したりするだけでは,達成できない。公正な社会(社会的正義)を達成するためには,善良な生活の意味をわれわれがともに考え,避けられない不一致を受け入れられる公共の文化をつくりださなくてはいけない」と述べています。

中学生の皆さんには,少し難しいかもしれませんが,背伸びしてこの本を手に取ってみてはいかがでしょうか。最先端の知を垣間見ることができるはずです。

最後に,みなさんも知っている聖書の一節を読んで終わりたいと思います。これまでの話と結びつけて皆さん一人一人「正義」について考えてみてください。

「ある人がエルサレムからエリコへ下って行く途中,追いはぎに襲われた。追いはぎはその人の服をはぎ取り,殴りつけ,半殺しにしたまま立ち去った。ある祭司がたまたまその道を下って来たが,その人を見ると,道の向こう側を通って行った。同じように,レビ人もその場所にやって来たが,その人を見ると,道の向こう側を通って行った。ところが,旅をしていたあるサマリア人は,そばに来ると,その人を見て憐れに思い,近寄って傷に油とぶどう酒を注ぎ,包帯をして,自分のろばに乗せ,宿屋に連れて行って介抱した。そして,翌日になると,デナリオン銀貨二枚を取り出し,宿屋の主人に渡して言った。『この人を介抱してください。費用がもっとかかったら,帰りがけに払います。』さて,あなたはこの三人の中で,だれが追いはぎに襲われた人の隣人になったと思うか。」(paddy )

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