「神に栄光、地には善意の人に平和あれ」
皆さんは中学校の義務教育の課程をこれで修了いたしました。つまりこれから受ける教育は義務教育ではなくなります。高校からの教育は義務教育ではないので、無理に受ける必要はありません。高校での教育を受けるか受けないは、本人の自由です。だからこそ皆さんが進学するときには、「勉強するんだ。」という強い意志のもとに学校生活を送らなければなりません。まずもって高等教育を受けることを自分の自由な意志によって選択し、その決めたことを義務として果たすのです。つまりこの点において自由と義務が矛盾しないことになります。これが近代人の特長なのです。
昔は仕事が世襲制であったことは知っていますね。いやでも親の仕事を継いでゆくのです。世襲制があると、親の仕事を継がずに逃げ出すことが自由になります。昔は逃げ出したい青年がたくさんいたでしょう。しかし現在は「職業選択の自由」があります。自分で職業を自由に選ぶのですから、義務は自分から発生します。だれもその仕事をしろと強制しているわけではありません。自分で仕事を選び、その仕事を愛し、強制でない義務として果たしてゆく、このような近代人の在り方を「自律」と言います。意志する魂が求められるわけです。律法の義務を越え、意志を持って生きることを説いたイエス・キリストの教えをここに活かしましょう。
皆さん、この自律に向けられた学校生活がまもなく始まるわけです。今語ったことは単に理論的な話です。活力ある生活への気概を持つのは皆さんです。自律した生活は皆さんの気概によってこそ成立するのです。そこに中学の時とは異なる高校の学校生活の楽しさがあるのです。皆さんの高校生活がそうして実りの多いものになりますように。