2013年度

晃華学園中学校高等学校 第3学期終業式 学校長式辞(3月20日)

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投稿日2014/3/21

今年の冬は東京も2度の記録的な大雪に見舞われるという厳しい冬でしたが、明日は春分の日、寒さも緩んで木々の新芽が伸び、強まる明るい陽射しに本格的な春の訪れを感じます。そして2013年度、最後の学期、3学期は今日で終わりです。

今年度は晃華学園中高の創立50周年という節目の年でしたが、皆さんにとってはどんな年だったのでしょうか。答案返却の日の午後、昨年に引き続き、高3を除く各学年、各クラスから、「学年の華」として推薦された40人ほどの生徒を招いて、生徒ラウンジでお茶会をいたしました。お茶をいただいた後、集まってくれた生徒一人ひとりに、この1年間、どういう学校生活を心がけたのか話してもらいましたが、返ってきたのは次のような報告でした。

○自分から声を出して挨拶した、○掃除を一生懸命やった(ゴミが落ちていれば拾った)、○制服をきちんと着るようにした、○提出物の期限を守るようにした、○人に嫌な思いをさせず、皆が明るい気持ちになれるよう場を盛り上げた、○行事、委員会活動に積極的に参加した(合唱コンで指揮者としてどうしたらよいか楽譜を見ながら寝ないで考え、クラスを最優秀賞に導いた)、○クラス委員、常任委員としてクラスの意見をしっかりまとめた、○部活と勉強を両立させるよう努力した等々……、また4月に入学してくる新中1から尊敬される上級生でありたいという抱負も聞けました。

生徒達が自分の言葉でこの1年、努力したことを報告してくれるのを聞いて、さすが「学年の華」、晃華には普段は目立たなくても、こんな心がけで日々の学校生活を送っている生徒がいることを改めて知ることが出来てうれしく、また勇気を貰いました。「学年の華」には選ばれなかった人の中にも、きっと色々なことで人知れず努力し、頑張っている人がいるに違いありません。全校生徒900人がそれぞれ、今年はこうしようと心に決めたことを実行してくだされば、学校生活が毎年、900の項目で、改善されていくわけですから、晃華学園は必ず素晴らしい学校になって行きます。

学年の終わりに当たって、一人ひとりこの一年間の自分の歩み、やってきたことを振り返りながら、新しいことが始まろうとしている学年に向って、明日からの春休みを有意義に過ごしてください。春休みは短い休みですが、それでも3週間ほどあります。新学期に備えて生活のリズムを崩さず、規則正しい生活を心がけてください。コツは起床と就寝時間、食事の時間を決めることです。一日24時間から生きていくのに欠かせない睡眠と食時の時間をとった残りが自由にできる時間です。この時間をどう使うかよく考えて計画を立て、有意義な休みを過ごしていただきたいと思います。

 

最近、朝日新聞で「女子高生の4割が1日6時間以上、スマートフォンや携帯電話を使っている」という記事を見てびっくりしました。スマホの平均所持率(女子高生95.1%)、スマホや携帯の1日平均使用時間(女子高生6.4時間、6時間以上4割、12時間以上1割超)、スマホや携帯を何かをしながら使う「ながら」利用の割合(TV74.8%、ご飯38.8%)、いずれも女子高生が際立って高いということです。なお「ネットを止めようとすると不安やイライラを感じる」などネット依存の疑いが強い中高生が全国に52万人ほどいると推計されており、「勉強など自分にとって大事なことが後回しになってしまうので、自己嫌悪に陥っている子どもも多い」などと聞きますと、これはとても心配です。

子どもがネット依存になった際の影響としては、精神面では睡眠障害とか、午前中に調子が出ないといった傾向が目立ち、健康や生活に大きな支障をきたします。またネットから離れられなくなると、食事は専らカップ麺で済ませるということになり、栄養不足から骨密度や筋力が低下したりする例もあるようです。また睡眠障害は思考力や集中力を低下させますので、学業にも悪影響を与えます。このように、ネットはコミュニケーションや情報収集に便利な道具ですが、使い方を間違えると、成長期の皆さんの心と体に大きなダメージを与える危険なものだということもよく知っておいてください。

最大の問題は、ケイタイやパソコンを何時間操作したところで、得られる情報の大半は真偽も定かではない、断片的で相互に何の脈絡もないものばかりで、物事の本質を見抜く大局観や長期的な視野を身につけることは出来ないということです。結果として、そこからはっきりした目的ある生産的な活動や行動は生まれず、人間が非常に受身になり、思考力が衰えるということです。健康にも精神にも害のある、そんな危険性のある“ネットの海”を漂流して貴重な時間を空費するよりも、自分を鍛え磨くこと、内面を豊かにすることに繋がることをしてください。

数年前になりますが、ノートルダム清心学園理事長のシスター渡辺和子に「教育における親の役割」というテーマで、保護者向けに講演をしていただいたことがあります。その中で21世紀は、生活を便利に快適にする物やケイタイ、インターネット、メール等々、溢れるほどの情報に囲まれ、悪の誘惑の強い時代であるから、“よく生きる”ために自制する力がとても大事になる、といっておられました。

自制する力とは、「したくてもしてはいけないこと」、「やりたくなくてもやらなければならないこと」、「今した方がよいのか、後にした方がよいのか」を、よく考えて選ぶことが出来る力です。また「幸せな人生を送るために育てるべき心」として、シスター渡辺は、?待つことが出来る心(滅多なことで切れない心)、?思いやりの心、?自分を大切にする心(女子教育において特に大事)をあげておられました。

ではどうしたら「自制する力」や「待つことが出来る力」、よい方を選ぶ「強い意志力」が育つのでしょうか。その点についてシスター渡辺は、とても面白いことをおっしゃっています。それは「面倒だから、しよう!」というものです。人には苦労を厭い、面倒なことを避け、自分中心に生きようとする傾向があります。でも人間らしくよりよく生きるということは、このような自然的傾向と闘うことなのです。「したくても、してはいけないことはしない」「したくなくても、なすべきことをする」そこに真の人間の自由があります。単に「したくないからしない」「したいからする」というのは、自分の弱さと自然性に負けているだけで、自由なのではありません。「面倒だ、でもしよう!」をモットーに怠け心に打ち克ち、安易に流れやすい自分と闘い、よい春休みを過ごし、体力、知力、気力を充実させて新年度、新学期を迎えてください。

 

「人は富を失っても、もう一度一生懸命働けばどうにかなる。名誉を失うことは、大変なことだが、これも誠実に尽くすことによって何とか挽回することができる。しかし人は意欲を失ったとき、死んだも同然である」(ゲーテ)

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