クリスマスイブの夜は、子どもたちにとっては「夢の夜」と言えます。サンタクロースがクリスマスプレゼントを持ってきてくれるからです。靴下をベッドの横に吊して、ワクワクしながら眠りについたといった経験は、多くの人にあるのではないかと思います。
私は、小学校1年生の時、サンタさんにお手紙を書きました。サンタさんに書いたお手紙は、「おすもうのまわしがほしいです」といった内容でした。サンタさんへのお手紙を枕元において、ワクワクしながら、眠りにつきました。翌朝、目を覚ますと、サンタさんからお返事のお手紙と、まわしが置いてありました。
私は、あまりの嬉しさに、まわしを母につけてもらって、父や兄を相手に相撲を取りました。今でも、その時に撮った写真がアルバムに残っており、その私の顔を見ると、自分のことながら、とても愛おしく思います。
しばらく経って、サンタさんからのお手紙を小学校に持って行って、先生や友達に自慢をしました。すると、少しませた友達から心ない言葉が返ってきました。「サンタさんは外国人なのに、なんで、カタカナで手紙を書いてくるんだよ。おまえの家は、煙突だって無いだろう。きっと、おまえの親がやったんだよ。サンタさんを信じているなんてバカだな〜。」
たしかに、サンタさんからのお手紙をよく見ると、母の書く字にそっくりでした。母にこのことを問いただすと、まわしは本物のまわしでは無く、母がかつて使用した腹帯でした。サンタクロースの正体は、母でした。私は、このことに深く傷つき、この日以降、まわし(腹帯)をしなくなりました。そして、サンタクロースの存在を否定するようになりました。
学生の時、私は大学に留学してくる外国人留学生の学生生活を助ける「カンバーセーション・アシスタント」というボランティアをしていました。12月に入って間もなく、私は留学生たちからパーティーに誘われました。招待状には「聖ニコライのパーティー」とありました。パーティー会場となっていた留学生の家に行くと、ドイツ人留学生がサンタクロースに扮し、私たちに感謝をしながら、様々なサービスを提供してくれました。そして、最後には、プレゼントまでくれました。十数年ぶりに私は、サンタクロースの存在に触れました。私は、このことを機会に、サンタクロースについて調べることにしました。
サンタクロースと聞いて思い浮かぶのは、太っていて、真っ白いヒゲにピンクのほっぺた、赤い服を着た優しそうなおじいさんですよね。赤い服と聞いてハッとした人は、かなりのカトリック通です。そう、サンタクロースの服は、司教の着る服の色なのです。サンタクロースは、カトリック教会の司教がモデルなのです。
4世紀、小アジアのミーラ(現在のトルコのデムレ)で宣教活動をしていた聖ニコラオ(ニコライ)司教が、その人です。ニコラオは、大変な恥ずかしがり屋で、貧しい人にお金を渡す時も、それが、自分であることが分からないようにしたそうです。ある夜、彼はある家の煙突に登り、そこから財布をこっそり落としました。すると、その財布は、その家の女の子が暖炉に干していた靴下の中に入ってしまいました。これが、靴下の中にクリスマスプレゼントを入れる習慣の始まりです。そんな聖ニコラオ司教を偲んで、12月6日の聖ニコラオ司教の祝日に、プレゼントを贈る習慣ができました。この12月6日に贈り物を贈る習慣が今でも続いている国もありますが、大半の国では、これをクリスマスの日に行うようになりました。
今から百年以上前に、『ニューヨーク・サン』の載った有名な社説『サンタクロースって、いるんでしょうか?』にこんな記述があります。
「あなたにも、分かっているでしょう。世界に満ちあふれている愛や真心こそ、あなたの毎日の生活を、楽しくしているものなのだということを。もし、サンタクロースがいなかったら、この世の中は、どんなに暗く、寂しいことでしょう!」
私は、大人になってから、この記事(本)の存在を知りました。
そして、子どもの時、「まわし」をプレゼントしてくれたサンタクロースのことを思い出しました。両親がサンタクロースに扮してくれたことは、私へ対する愛や真心なのだとようやく気づくことができました。ようやく、サンタクロースの存在を受け入れることができるようになりました。
最後に、プレゼントの意味も考えてみたいと思います。
人はみな「プレゼント」=「贈り物」を欲しがります。私も同じです。
しかし、英語の辞書を開くと「プレゼント」には、もう一つの意味があります。それは、「現在、ここに居る」といった意味のものです。掛詞として考えると、「現在、私がここに居ること」、「現在、あなたがここに居ること」自体が『贈り物』なのだと思います。
「誰からもクリスマスプレゼントをもらうことが出来ない」、「サンタクロースが私の家には来ない」、と嘆いている人にも、クリスマスプレゼントは届いています。気がついていないだけです。
「あなた自身が、この世に生まれたということ」、「友達が、この世に生まれたということ」、そして、「神様がイエス・キリストをこの世に送って下さったということ」、これがクリスマスプレゼントなのです(クリスマスは、「イエス・キリストが派遣された」の意です)。
人はすでに沢山の贈り物をもらっているのです。あまり、多くを求めずに、家族・友人・同僚など、お互いの存在に感謝をしながら、クリスマスを過ごすことが出来たらと良いのではないか思います。
I wish you a merry Christmas
(KOKA MESSENGERより転載)
(おかわり)