2013年度

2013年度第1学期終業式 式辞 (2013年7月19日)

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投稿日2013/7/24

 お早うございます。今日で1学期が終わり、愈々、夏休みが始まります。今年は平年より10日以上も早く梅雨が明けました。梅雨明けと同時に、連日の猛暑で多くの人が熱中症で病院に運ばれています。暑さと上手に付き合いながら、心と体の健康には、十分注意してください。

 明日からの夏休み、それぞれにクラブや文化祭準備、夏期講習、読書、旅行、稽古事など、やりたいことが一杯あると思います。また自分のペースでじっくり学習に取り組める夏休みは、得意分野を伸ばし苦手科目を克服する上で絶好の時期です。ただし、たっぷりあると思っていても、時間は刻一刻過ぎ去っていくもの、貴重な休みを無駄にしないためには、ある程度、目標を絞って計画を立てることが大切です。

 学期中は決まった時間割にそって、ある意味、自分の意志に関わりなく物事は進んでいきますが、明日からは一日、24時間をどのように過ごすか、各自の自由な裁量に任せられます。自分で立てた目標と計画のもとに、自分の生活時間をどこまで自己管理できるか、チャレンジしてください。自由に使える時間を上手に管理し、「学ぶ力」の土台である生活習慣力を身につけることが出来れば、充実した夏休みが過ごせて、2学期につながっていくはずです。

 創世記の天地創造の物語で、神は6日間働いて7日目に休まれたとあります。6日間の労働と労働後の休息という、この労働と休息のバランスが、神が創造的な仕事をなさるためにも必要であったというのは、とても興味深いことです。神の姿に似せて造られ、神の創造の業に参与していく使命を与えられているわたしたち人間にとっても、やはり労働・仕事と休息のバランスを取ることは、人間らしく生きるためにも、真に創造的な仕事をしていくためにも必要だということなのでしょう。日常から離れて普段の生活を見つめ直し、学期中には出来ない体験、夏休みだから出来ることに思い切ってチャレンジしましょう。

 例えば読書、先生方が夏休み推薦図書を今年も色々紹介してくださっています。本の内容についての紹介文、推薦理由などを参考に、素晴らしい一冊に出会ってください。ところで「本」という文字は、「木」の根元に横棒が一本。そこから、<漢語>草木の根、根に近い部分を指し、<日本語>物事の元になるもの、根本、基本の意味から、規範となるもの、主たるものをいいます。つまり人は本を読むことで、物事の規範となる、大切なものに出会うことになります。人類は文字を持ったときから数千年の間、この出会いを重ねて、先人たちの素晴らしい知恵に触れ、その思いの深さに啓発されて、生きる指針を得てきました。

 作家の石田衣良さんは、読書について次のように述べています。
 「本を読むと本当に癒やされますね。最初は逃げでいい。『この世界はつらいなあ』でも『学校に行きたくないなあ』『受験勉強するの嫌だなあ』でも何でも、いろいろな状況から面白おかしい本の中に逃げる。主人公と一緒にハラハラドキドキ冒険をしたり悩んだりして、こっちの世界に戻って来る。すると自分が一回り豊かになっている。読む前よりちょっといい人間になっていると思えるようになる。フィクションの世界に行くことで、現実の世界もちょっと変えられるのです。本を読むことで自分が変わるから世界も変わる、ということです。別な見方、別な物事の受け取り方が見つかるのですね。読書には、いわば戦略的撤退というか、一旦リアルな世界から引くことで、もう一段強く豊かになってもとの世界に参加する準備が出来る、そういう不思議な力があります。」
 「何でもいいから、自分がひっかかりのある面白い本を見つける。そしたら、ぜひ、その作家と仲のいい作家、あるいはその作家が尊敬していた作家の本を探して、横に掘ったり、過去に戻ったりしながら本を読んでほしい。そうするとどんどん世界が広がる。学校の勉強にも役に立ちますよ。知らず知らずのうちに読解力は上がっていきますから。」

 なお中高では今学期、新聞記事を読んで、これはと思った記事を切り抜いて、生徒玄関前のパネルに張って、お互いに紹介しあってきましたが、政治、経済、文化、社会、スポーツ、芸能、世界の動き等々、新聞ほどあらゆる種類の情報が集まっていて、これほど役に立つものはありません。これは重要、これは面白いと思った記事のスクラップを作っておくと、後で何かと役に立ちます。普段は新聞を読む時間はないと思いますが、夏休み中は、新聞にも目を通し、日本の社会がどうなっているのか、世界がどう動いているのか、関心を向けてほしいと思います。

 夏休み中、皆さんに体験してほしいこととして、もう一つ、ボランティア活動があります。なぜ「ボランティア活動」かといえば、1)ボランティアは、身の回りの生活課題,社会課題に気付くことから始まります。気付いて立ち上がり、行動を起こせば、否応なく学ばざるを得ない、調べざるを得ない事態にぶつかり、視野が広がっていきます。2)ボランティアは、「人間は他者に必要とされることに喜びや生きがいを覚える存在」であることに、改めて気付かせてくれます。学校教育の中にボランティア学習を導入することの必要性を訴え続けてきた、イギリス人のアレック・ディクソンは、「少年は必要とされて初めて大人になる」といっております。人間は「人から必要とされる必要のある存在」だということです。3)ボランティア活動は、これまで接したことのない職業の人、自分とは違う境遇にある人、違う年齢層や世代の人々と出会い、交わり、その人達から学ぶという得がたい機会をも与えてくれます。このようにボランティア活動には、優れた人間形成の働きが色々あるからです。

 この他にも、旅行で見聞を広めたり、普段は出来ない家事の手伝いをして、家族との絆を強めたり、不得意科目の克服に取り組んだり、高校3年生は希望の進路をたぐり寄せるための厳しい勉強……と、学年によって、また一人ひとりの置かれている状況によっても、この夏休みの持つ意味合いは当然違うでしょう。ですから、どんな目標を掲げて、どんな計画を立てたらよいか、それは各自が決めることですが、この夏休みをどのように過ごし、どのような果実を手にするかは全て自分の責任、との覚悟、自覚をもって、実りの多い充実した夏休みを過ごしてください。

 9月に心も体も一回り逞しく成長した皆さんと再会するのを楽しみにしています。

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